放熱への証

実は、夏にノンフィクション作家 吉岡忍さんの『放熱の行方』を読んだのがきっかけで
それ以来、尾崎を遠ざけていた。

放熱の行方―尾崎豊の3600日 (講談社文庫)

放熱の行方―尾崎豊の3600日 (講談社文庫)

なぜなら、死後、どんどんと美化されていく尾崎豊像に対し、
反旗を翻すかのごとく、部分部分で辛口とも批判ともとれる言葉が並んでおり、
だからといって、怒りを感じるわけでもなく、
どちらかというと「参りました!」的な自分がそこにいたからである。


そして、ついに彼のCDをすべてヤフオクへ出品し始めた。
ヤフオクへ←−−−クリック!


しかし、先日、ブログでも書いたけど、
大学センター試験で扱われたって話がきっかけになり、
また、同じタイミングで彼の親友だった岡村靖幸の3度目の覚醒剤逮捕が報じられ
今一度、尾崎を聴き直してみようと思った。


放熱への証

放熱への証

放熱への証

言わずと知れた、彼の死の直後にリリースされた最後のオリジナルアルバムである。
その当時、半年以上もの間、毎日聴きまくったアルバムである。


尾崎といえば、どうしても十代の3部作がフォーカスされるが、
俺は成人後の尾崎を聴くことの方が多い。
それも、ランダムではなく、アルバムの曲順どおりに聴き、
アルバム全体のストーリーをイメージするのである。


放熱への証


アルバムタイトルが抜群だと思う。


彼は生き続けたいと思っていたと思う。
だけど、反面、短命かもしれないと思っていたと思う。


憧れだった武道館ライヴで披露するハズだったアルバムだ。
おそらく、彼がつくったアルバムの中で一番、
彼自身が思い入れを込めた作品だったと思う。


『自由への扉』はポップだけどメッセージ性が抜群。
 だって、「裏切られても信じることから、奪われても与えることから・・・」って
 Love&Peaceを見事に表現している。


『優しい陽射し』は彼のバラードの中では一番の名作だと思う。


『ふたつの心』はバラードとして出来上がり過ぎていて、ちょっと敬遠してしまう。


『太陽の瞳』の英題が「Last Christmas」っていうのが意味深。
 だって、本当にラストになってしまったんだから


『Monday Morning』は不登校・出社拒否症の人たちに聴いてもらいたいと思う。


『闇の告白』はトリビュートアルバムで斉藤和義が見事に歌い上げてくれた。


彼は10代の3部作で29曲を発表した。
1曲足りなかった。
でも作品はあったはず、なのに3rd『壊れた扉から』は9曲で終わっている。


そして、『放熱への証』で11曲を発表。
僕はそこに「帳尻あわせ」を感じずにはいられない。


このアルバムのサブタイトルは・・・


「生きること、それは日々を告白していくことだろう」


彼はこのアルバムで一旦の完結を示唆したかったのだろうと想像する。